【ハンドメイド】オーストリアの「プチポワン」って?初心者向けの刺し方もご紹介~世界の刺繍~
世界には、さまざまな種類の刺繍が存在します。国や時代ごとに異なる表現が編み出されてきた刺繍はどれも美しく、見ているだけでとても楽しいです。
今回は、オーストリアの首都ウィーンに伝わる伝統的な刺繍技法「プチポワン」をご紹介します。
世界の刺繍から、その国の歴史や文化を紐解いていきましょう。
プチポアンとはどんな刺繍?特徴をご紹介
プチポアンは、オーストリアの首都ウィーンで花開いた伝統的な刺繍技法です。
布の織り糸をカウントしながら布目をテントステッチでバツ印のように埋めていき、絵画のようなイラストを塗っていきます。縫い方は多少異なりますが、クロスステッチのような仕上がりというと想像しやすいでしょうか。
クロスステッチをはじめとするほかのカウントステッチと大きく異なる点は、なんといってもその細かさです。目が細かければ細かいほど繊細な絵画表現が可能になりますが、難易度も上がって販売価格もより高価になります。なかには1cm角のなかに300目も差し込まれてできた作品もあるそうです。ここまで細かいと、もはや縫い目も見えないくらいなのではないでしょうか。
目が細かく縫い目も重ねて刺されるプチポアンは作品に厚みが出るのが特徴で、丈夫で長持ちするとされ親子代々受け継いで使用できるともいわれています。
そんな魅力的な刺繍作品であるプチポアンを、さらに深掘りしていきましょう。
プチポアンの歴史、ハプスブルク家との関わり
プチポアンは、ヨーロッパで権力のあった貴族・ハプスブルク家によって広められたとされています。
ヨーロッパでは13世紀頃からゴブラン織という刺繍が流行し、王侯貴族に向けたタペストリーが制作されるようになりました。そして、糸を編むことで絵を描き出すゴブラン織がより繊細に洗練されたものこそがプチポアンなのです。
ハプスブルク家出身の女帝マリア・テレジアが治めていた18世紀のオーストリアで大流行したプチポアンは、彼女の娘マリー・アントワネットも好んだとされています。その後、プチポアンはウィーンだけでなくパリや神聖ローマ帝国(現在のドイツ)の方へも広がっていきました。
こうしてプチポアンは、彼女たちのような貴族や上流階級の女性のたしなみとして人気を博しました。テーブルクロスや壁掛けといったインテリアから、アクセサリーやハンカチといった身の回りの小物にまで、プチポアンが刺繍されたそうですよ。なかでも、宮廷絵画風のプチポアンをあしらったハンドバッグを持つことは当時の女性たちにとって一種のステータスだったといわれています。
日本とプチポアン
ヨーロッパ王室から愛されているプチポアンですが、実は日本の皇族もプチポアンを好んでいたといわれています。
ウィーン・ホーフブルク宮殿のアーケード内にあるプチポアンのお店「マリア・シュトランスキー」の店内には、なんと常陸宮家の正仁親王妃華子殿下がご来店した際の写真が飾ってあります。
プチポアンはヨーロッパだけでなく日本をはじめとする多くの国々からも愛されていることが分かりますね。
プチポアンを学ぶには?
プチポアンを学ぶには、どうしたらいいのでしょうか?プチポアンには、以下の道具が必要です。
- 色番号が書いてある図案
- 刺繍枠
- 平織りの布(初心者は目の荒い物がおすすめ)
- クロスステッチ針
- 好きな色の刺繍糸
- しつけ糸
- ハサミ
- ほつれ止め(マスキングテープなど)
プチポアンを綺麗に刺すためには、 針を刺す布目がずれないよう にしなければなりません。布目をひとつひとつカウントするのはなかなかに骨が折れる作業のため、 初心者の方は目の荒い布を使うのをおすすめ します。カウントの手助けになるように、しつけ糸で図案にそってあらかじめ十字のガイドラインを入れるのもおすすめです。
針は先の丸いクロスステッチ針を使用しましょう。先が尖っているフランス刺繍針やビーズ針を使用すると、布の織り糸に針を刺してしまい、布目のカウントがずれてしまう恐れがあります。
プチポアンは独学で学べるキットもあまり売られておらず、レッスン教室も少ないです。しかし、地域やデパートのカルチャーセンターで講座が開かれていることがあります。気になる方は定期的にチェックしてみてくださいね。
ロマンティックな刺繍プチポアン
刺繍というとどうしてもフランス刺繍のイメージが強いですが、同じヨーロッパでも趣向の異なる刺繍技法があることが分かっていただけたかと思います。
ロココ時代の絵画のような甘美でロマンティックな図案が魅力的なプチポアンは、多くの上流階級の女性たちや王妃から愛され、現代まで受け継がれてきました。
ヨーロッパの文化やプリンセスが好きな方、新たな趣味を見つけたい方はぜひプチポアンに挑戦してみてくださいね。
やってみよっか?