ファッションブランド C’est pas Grave 代表 益田美代子氏に聴く、好きなものへ突き進むということ(後編)
さて、後半は、美代子さんが30歳で立ち上げた自己ブランド「C’est pas Grave / セパ グラーヴ」設立からスタートします!
念願であった自己ブランド設立に際しても多くの壁があった美代子さん。しかし、持ち前の前向きさと明るさでどんどん「自分の好きなもの」へ向かって進んでいきます。
そこには、生きる上で大切なヒントが転がっているはず…
ぜひ最後までお楽しみください♪
前半をまだお読みでない方は こちら から
いよいよ!念願の自己ブランド「C’est pas Grave / セパ グラーヴ」設立!
- そこでいよいよ「自己ブランド」の再スタート!宣言通り30歳の時に「C’est pas Grave (セパ グラーヴ) 」を立ち上げたんですね!どのような気持ちで立ち上げたのでしょうか。
はい!「C’est pas Grave / セパ グラーヴ」はフランス語で「大丈夫、大丈夫、OK!」という意味です。フランスが好きなのと「ファッションを気軽に楽しんでもらいたい」という願いを込めて、名付けました。ファッション業界が密集している原宿で再スタートを切ったんですが、最初は全く売れず苦労しました...。「まずは3年!」と思い、試行錯誤の日々でしたね。正直、経済状況や暮らしは学生時代に戻ったようでした。「ただただ、好きでやっていた」という感じですね。
「自分の好きなもの」に誠実に向き合うということ
- 大きな目標であった「自己ブランド設立」を果たした後も、苦難が待っていたのですね。その後はどのように立て直していったのですか。
正直、何をやってもうまくいかないといった時期が続くと、負のスパイラルに陥るんですよ。自分とはかけ離れた「こういうのが売れるかな」という商品ばかり作っていたように思います。
すると、ある時「もう考えるのやめよう!」と思ったんです。ある意味吹っ切れたのでしょうね。そこで自分のブランドを振り返ってみると、学生時代からずっとデニムが好きだったのに、縫製が難しいから、商品化が難しいから、古着のデニムが一番カッコいいから、という理由で作ってこなかった。自分のブランドをせっかく立ち上げたのに本末転倒ですよね。
そこで、思い切ってシフトチェンジし、デニム類を本格的に始めたんです。「これが売れるかな」「今これが流行っているな」とは一旦離れて「自分が本当に好きなもの」に集中しました。すると歯車がひとつひとつはまるように、不思議とうまく回り始めたんですね。「このブランドはデニムやパンツが得意なんだ」というイメージも付き、大手とのお取引が始まりました。
- なるほど。それで軌道に乗って今に至るという。現在、ブランドを立ち上げて19年(今年20周年!)経って思うことは何でしょうか。コロナ禍もあって心境の変化などはありますか。
40歳くらいになってでしょうか。忙しくも充実した日々を送っていたのですが、「はたして私が作った洋服は、お店に卸したあとお客様にどのように着ていただいているのだろう」「販売後も、何かサポートができることはないかな」と考えるようになりました。
30代の頃から気になってはいたのですが、なんせ時間がなくて。
ですが、コロナ禍になったことで改めて時間ができ、「自分らしいものづくり」について再度考えることができたんです。
例えば、オンラインショップでも工夫をすればお客様の顔が見られるような売り方ができる。時代も変わってきているので自分がやりたいビジネスをさらに追求できる。服の製作のみでなく、お客様とコミュニケーション取りながら購入後もケアができるような流れを作りたい、と常々考えていました。
無駄を削ぎ落とし「本当にいいもの」だけを届けたい
- ビジネスの流れのみでなく、生地や入手ルートなどについても深く考えられるようになったとか。
本当にそうなんです。
まず、年齢とともに肌質や服の着方、相性がいい素材などが変わってきたなあと感じるようになりました。余計なものを削ぎ落としてよりシンプルに作りたいと考えるようになって。例えば、首のところに付けるタグもチクチクしていやですよね(私も敏感肌なのでよく分かります)。それだったら取ってしまおうと。
それと、洋服に付いている下げ札も時々とてもいい素材と糸で付いているのを見かけませんか。どうせ切って捨ててしまうのにデザイン性の高いものを使うと、その分お値段も上がります。もちろん、その部分もブランドのコンセプチュアなのですが、お客様にとっては不都合になる場合もあるのではないかとも考えたのです。
デザイン性は落とさずとも、よりシンプルにしてできる限り適正価格として提供したいと思っています。
「丁寧=気持ちがいい」では全くなくて「本当に大切なもの」「本当にこだわっているもの」だけを届けたいんです。
- なるほど。決してお値段を下げるところに注力するのではなく、洋服に使う素材にはとことんこだわると。
そうですね。最近では「フェアトレード」についても積極的に情報収集して取り入れるようにしているんです。地球や環境に優しく、人の肌にも優しい天然資材は昔から大好きでした。
一例を上げると、以前から使用している「タンザニアのbio Re COTTON」があります。
「オーガニックコットン」は決して安くはなく、とても高級なものでもあります。現地の生産者にもフェアな報酬が支払われるためには、当然のことでもあるのです。それに、必要以上に手を加えられていないコットンって本当に肌触りがいいんですよ。生地にするまでの工程もとても丁寧で、何年使ってもふわふわのまま。なのでお客様にもそれを味わっていただけたらいいなと。
美代子さんの「大切にしているコト」
- 激動だった20代から現在に至るまで本当に様々な経験をされてきましたね。現在、コロナ禍でも自分のブランドを続けていく上で、美代子さん自身が大切にされている信念や意識していることはありますか。
自分のブランドのため、「自分が正しい」と思うことに挑戦していけるのも、とてもやりがいです。あと、先ほども話した「もっと購入者の方と直接コミュニケーションを取りたい」という点も自分なりに追求しています。例えば、オンラインサイト上でやり取りをしたり、商品を購入いただいたお客様に一言を添えて発送したりしていますよ。
もちろん、自分で生計を立てて生活をしていくことが第一ではありますが、「自分の好きなこと」をやりながら、考え、過ごしていく時間は幸せだし、とても豊かですよね。
「お金のことを全く気にしない」と言ったら嘘になりますが、利益よりも自分の考えや価値観を軸にして活動している今が本当に楽しいんですよね
- 「好きなことを追求する」というのは時にとても大変ですが、楽しく豊かですね。また、これはファッション業界に限ったことではないと思いますが、今まで環境が変わる中で、美代子さんが人と付き合う時に気を付けていたことはありますか。
最初に言ったように、友達が本当に「宝物」で、人との繋がりやご縁が人よりも強いかなと思います。
コミュニケーションに関しては、高校生の時の経験がずっと記憶に残っていて…。
実は友人に「呼ばれて振り向く時に表情が少し怖いよ」と言われたことがあったんです。もちろん、自分では全く気付いてなかったのですが、話しかけた時にそんな表情をされたら誰しも決していい気分ではないですよね(笑)
だからそれからは、少なくとも第一印象は明るく元気に接するように意識しています。第一印象を与えるチャンスは一度しかないですが、一番大切なので。
会社などの組織などで働くとしても、みんなでオープンに明るくディスカッションできた方がいいですもんね。
美代子さんの洋服は以下からご購入いただけます♪
インタビュー後記
美代子さんの洋服のファンは多く、「長く着れる」「本当に肌触りがいい優しいコットン」「肌が自然と選んでしまうよう」という感想も。その一着にはファッションデザイナー・益田美代子さんの想いがいっぱい詰まっています。
大変のことがあっても「洋服が好きだから!」の一心で突き進んで来た彼女。どんな時も笑顔を忘れずポジティブに進む彼女の周りには、自然と『ご縁』がやってくるのかもしれません。
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