ワット・シー・チュムはスコータイ歴史公園城壁外部に位置する寺院跡です。長方形の建物の隙間から、高さ14.7メートル、両膝の幅が11.3メートルの巨大な大仏座像が顔を出しているという、変わった造りをしていることが特徴です。この大仏はアチャナ仏といい「おそれないもの」を意味し、悪魔に打ち勝つ、降す降魔像として描かれています。仏像を囲む壁は3mと厚く、多数の釈迦にまつわる壁画が彫り込まれています。近隣には土産物屋があります。
歴史
この地域は、アンコール王朝支配下における中心地でした。ワット・シー・チュムは13世紀に、タイ族によって始めて成立したスコータイ王朝時代に建設されたとされています。大仏を安置する礼拝堂や横の本堂などは、後のラーマカムヘーン大王(1239–1317)の時代に建立されたものです。仏像頭部には、国王専用の部屋があり、スコータイの王様が座して、まるで仏像が話しているように、参拝者に向けて声を放ったと伝えられています。
見どころ
ワット・シー・チュムの魅力は、アチャナ仏が放つ、すべてを見通しているような、独特の迫力とたたずまいです。両足を組み、左手は組んだ足の中央に、右手は地上を指すというスタイルには「大地が割れ、隙間に悪魔が吸い込まれた」という意味があり、悟りを開いた姿を描写していると言われています。地を指す指には、参拝者が貼ったとされる金箔が見られます。一見、壁に囲まれたアチャナ仏が窮屈に見えますが、これは仏像をより大きく見せるための工夫です。真下から見上げると、アチャナ仏の目線と参拝者の目線が合うように造られており、仏様と1対1で対峙している様な不思議な気持ちになります。