【ハンドメイド】中国の伝統的な技法「スワトウ刺繍」って?歴史や特徴をご紹介~世界の刺繍~ image

【ハンドメイド】中国の伝統的な技法「スワトウ刺繍」って?歴史や特徴をご紹介~世界の刺繍~

世界には、さまざまな種類の刺繍が存在します。

国や時代ごとに異なる表現が編み出されてきた刺繍はどれも美しく、見ているだけでとても楽しいです。

今回は、そんな刺繍の中から、中国に伝わる伝統的な技法「スワトウ刺繍」をご紹介します。世界の刺繍から、その国の歴史や文化を紐解いていきましょう。

スワトウ刺繍とはどんな刺繍?歴史と特徴

スワトウ刺繍は、中国広東省の町・汕頭(すわとう)地方に伝わる伝統的な手工芸です。

汕頭はもともと手工芸が盛んな地域でしたが、18世紀頃にヨーロッパからやってきたキリスト教宣教師によりヨーロッパのレースや刺繍技術が伝えたられたことによって、スワトウ刺繍が完成したと言われています。

そんなスワトウ刺繍は、綿や麻といった天然の素材に、透かし模様や糸の盛り上げでレースのような模様を描いた装飾的なデザインが特徴です。

汕頭の地方で親から子へと受け継がれてきましたが、とても手がかかる刺繍技法のため近年では担い手が少なくなってきており、最近はその多くが機械で作られるようになってきました。ハンカチや着物の帯などに施されて販売されているので、デパートなんかで見たことがあるという方もいるのではないでしょうか。

特に、綿や麻といった吸収性の高い生地を使用していることからハンカチに加工されることが多いスワトウ刺繍。しかし、技術を持った人が年々減っているため、手縫いのものだとハンカチでさえ1枚10万円を超える高価な製品も見られます。10万円のハンカチで手を拭こうという気にはとてもではないけれどなれません。高級感あふれる繊細な刺繍が施されたハンカチは実用品というよりもむしろ芸術品です。

ここからは、スワトウ刺繍の学び方や歴史をさらに詳しく見ていきましょう。

スワトウ刺繍を学ぶには?

スワトウ刺繍を学ぶには、どうしたらいいのでしょうか?スワトウ刺繍には、以下の道具が必要です。

  • 籐(とう)や竹で作られた刺繍枠
  • 綿や麻などの天然素材の布
  • 刺繍針
  • 刺繍糸
  • ハサミ
  • 図案を写すための道具

スワトウ刺繍では、大きな丸い刺繍枠を使用してデザインに合わせた様々な太さの糸で刺繍をしていきます。職人の方々の動画を拝見すると、細かい作業であるにも関わらずとても手際が良く早いスピードで縫われていくため驚かされます。

スワトウ刺繍は教えられる方が少ないのか、検索をしてもお教室を見つけることができませんでした。刺し方のテキストやキットなども販売しておらず、独学で学ぶのも難しそうです。本などで紹介されることも少ない一方、職人の方の動画が少しだけ公開されていたので、ご興味がある方はそこから刺し方を学んでみるのも良いでしょう。また、スワトウ刺繍のアイテムを扱う会社は日本国内にもいくつか存在するので、そちらに問い合わせてみると何か情報が得られるかもしれません。

スワトウ刺繍の技法

スワトウ刺繍では様々な技法を組み合わせて模様を描き出します。ここでは、代表的な3つの技法をご紹介します。

透かし模様の刺繍

スワトウ刺繍は、穴が空いているように見えるレースのような透かし模様の刺繍が特徴的です。この作り方には2つの技法があります。

1つ目は「抽綉(ツオシュウ)」と言って、布を切ったり縦糸や横糸を引き抜いたりして出来たスペースに残った糸をかがる方法です。

2つ目は「拉綉(ラシュウ)」と言い、生地に糸を通す際に糸を引っぱることで、生地の織り糸の間隔を広げて穴をあける方法です。

こうした技法は、一般的には「(糸が)引かれた」という意味を持つ英語「drawn」に由来するドロンワークと総称されます。

編み目模様の刺繍

スワトウ刺繍では、上記の技法から派生して、布に開けた穴の中に糸を渡すことで蜘蛛の巣のような編み目模様を描く手法も多く使われています。こうした模様は、空にかざすと穴から光が差してとても綺麗です。

芯入りの刺繍

作りたい模様にそって糸で芯となる土台を作り、そこにサテンステッチなどを被せて綺麗にコーティングしてあげることで、模様を盛り上がらせる技法も有名です。この手法を用いると作品が一気に華やぐため、フランス刺繍などでも多く使われています。こうした点からもルーツであるヨーロッパの刺繍を思わせますね。

ただし、スワトウ刺繍はとても繊細なため、土台の芯もとても細く縫われます。そのため、とても細かい作業を要するのです。

中国三大刺繍

中国にはスワトウ刺繍をはじめ、蘇州(そしゅう)刺繍・相良(さがら)刺繍などの有名な刺繍があり、これらは「中国三大刺繍」と呼ばれています。せっかくなので、ここでは残りの2つの刺繍もご紹介します。3種類とも趣向は異なりますが、どれも非常に美しい刺繍です。

蘇州刺繍とは?

蘇州刺繍は、通常の刺繍糸の2分の1から36分の1ほどの髪の毛よりも細い絹糸を縫い重ねながら模様を描く技法です。50色以上もの色数を使い作り出す作品は「絹の絵画」とも呼ばれ、非常に繊細で美しく、気品に溢れています。「両面刺繍」と呼ばれる面と裏で別の色彩や柄を引き出す美しい技法が有名です。

相良刺繍とは?

相良刺繍は、生地の裏から抜き出した糸で玉留めを作って、その玉を連ねて模様を描く技法です。他の刺繍と比べて糸の光沢は失われますが、そのぶん落ち着いた雰囲気になります。立体感もあるため、陰影がついて独特な風合いが表現できます。

中国三大刺繍はどれも非常に手間暇のかかるものですが、それだけ繊細で美しい表現が可能になります。着物を仕立てる際に施されることもあり、日本文化とも相性が良いのです。

中国の伝統技法スワトウ刺繍

高級感あふれる繊細なスワトウ刺繍。

美しい工芸品ほど、制作に時間と技術を要するので、継承者がなかなか育たないという現実があります。残念なことにスワトウ刺繍は日本では学べる場所もなく、近年では工業化が進んでしまっているという現状です。ですが、中国は刺繍の文化が盛んな国でもあるため、技法存続のための取り組みはきっと行われていることでしょう。それは他の蘇州刺繍、相良刺繍についても同様です。

スワトウ刺繍の作品はとても高価なため手に入れることはなかなか難しいですが、デパートや専門店で眺めるだけでもとても幸せになれます。ご興味がある方はぜひ探してみてくださいね。

やってみよっか?

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