【ハンドメイド】「日本刺繍」って?日本の伝統技法をご紹介~世界の刺繍~
世界には、さまざまな種類の刺繍が存在します。国や時代ごとに異なる表現が編み出されてきた刺繍はどれも美しく、見ているだけでとても楽しいです。
今回は、そんな刺繍の中から、私たちが住む日本に伝わる伝統的な技法「日本刺繍」をご紹介します。
世界の刺繍から、その国の歴史や文化を紐解いていきましょう。
日本刺繍とは?西洋の刺繍との違いを解説
日本刺繍は、日本に伝わる伝統的な刺繍技法です。
専用の針と細い絹糸が10本ほど束になった「釜糸」という糸を用いて、四季折々の植物や鶴や鯉といった生き物のモチーフを刺繍していきます。着物や帯・和装の小物に仕立てられることが多いため、普段から和装をする方にとっては馴染みがありますが、そうでない方は日常生活で見かけることは少ないかもしれません。
フランス刺繍との大きな違いは、やはり糸です。フランス刺繍では撚りのかかった綿の糸を使用しますが、日本刺繍では撚りのない絹糸が使われます。このことから日本刺繍には絹特有の光沢が見られ、ツヤっとして高級感のある格式高い作品に仕上がります。
絹糸も針も職人が手作りのものが多く、たくさんの人の手間と時間がかけられる日本刺繍。ここからは、発祥地や歴史をさらに詳しく見ていきましょう。
日本刺繍が有名な地域
日本刺繍は、地域によって細分化されています。ここでは、日本刺繍の有名な産地を2つご紹介します。
京繍(きょうぬい)
京都府京都市で伝わる日本刺繍です。794年に桓武天皇が都を京都に移したことで(平安遷都)、京都でも貴族の衣装や武具などの需要が高まり、日本刺繍が発展していきました。日本の伝統工芸品として国に指定されています。
加賀繍(かがぬい)
石川県金沢市で伝わる日本刺繍です。仏教が金沢に伝わった際に、刺繍技法も京都から伝えられました。布に染めた文様の上に刺繍をする京繍と異なり、無地の布地に下絵を描いて刺繍をするのが特徴です。こちらも、日本の伝統的工芸品として国に指定されています。
江戸繍(えどぬい)
東京で伝わる江戸刺繍は、安土・桃山時代から発展したといわれています。こちらは東京都の伝統工芸品として指定されています。
日本刺繍の歴史
日本の伝統的な刺繍技法として知られる日本刺繍の起源は、今から約1500年前の西暦500年前にインドから伝わった「繡仏」という仏教由来の刺繍作品に由来するといわれています。その後、刺繍で仏像や仏教主題を表現する繡仏は日本でも盛んに制作されるようになりました。奈良の中宮寺には、飛鳥時代に聖徳太子の死を悼んで制作された日本最古の繡仏「天寿国曼荼羅繍帳」が収蔵されています。
平安時代には、こうした刺繍技法で貴族の十二単衣や雅楽師の衣装を装飾するようになり、和装文化の装飾技法として刺繍が発達していきました。
江戸時代になると、財力をつけた町人たちも日本刺繍が施された贅沢な着物を仕立てるようになります。特に、刺繍入りの掛袱紗(結納や祝い金に掛ける袱紗)は嫁入り道具としても重宝されました。
さらに明治・大正時代になりヨーロッパとの外交が盛んになると、海外に向けた刺繍絵画が制作されるようになり、日本刺繍は日本の文化として確立しました。
こうして、1600年以上もの長い歴史をもつ日本刺繍は、その時代時代の人々の生活の中で受け継がれてきたのです。
日本刺繍を学ぶには?
日本刺繍を学ぶには、どうしたらいいのでしょうか?
日本刺繍には、以下の道具が必要です。
- 布を張る木の枠
- 布(正絹が好ましい)
- 刺繍針
- てこ針(糸の撚れを直すもの。目打ちで代用可)
- 色とりどりの釜糸
- 金糸、銀糸
- 和裁用のはさみ(糸切りばさみで代用可)
- 下絵を描くための道具
初心者の方が独学で習得するのは難易度が高いとされる日本刺繍ですが、レッスン教室は意外にもたくさんあります。自国の文化というだけあり、カリキュラムのしっかりした教室が多い印象です。また、和裁や着付けを扱う専門学校や一部の美術大学にも日本刺繍の授業を受けられるところがあるようです。
現代では日本人の着物離れが進んでいることもあり、日本刺繍もかつてのような需要は失われています。それに伴って後継者の職人も少なくなり、技術の伝承が難しくなってきている地域もあります。
日本の伝統を守るためにも、日本刺繍を習ってみてはいかがでしょうか。
着物を彩る美しい日本刺繍
古来から日本に伝わる装飾技法、日本刺繍。着物や和装小物に施された色とりどりの古典模様や日本由来のモチーフは、絹糸によって上品に輝き、見ているだけでもうっとりしてしまいます。
着物なんて成人式以来着ていない……、という方も、これを機にデパートへ和装を見に行ってみませんか?刺繍を見に行ったつもりが、素敵な着物との出会いもあるかもしれませんよ。
また、日本刺繍にご興味がある方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?その一歩が、日本刺繍の継承につながり、世界に羽ばたいていくきっかけになるかもしれません。
やってみよっか?