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【芸術の秋】フィンランド・グラスアート展を見に行こう!<山口・岐阜・兵庫>

いま全国の美術館を巡回しているガラス工芸品の展覧会があるのをご存知でしょうか?

この展覧会の特徴は、何といっても、現在もイッタラ社で販売している作品のルーツを知ることができる点です。普通は、美術館に展示してある作品って買えませんよね。でも、今回の展示品の一部は、現行品を購入できるんです。

同時開催はフィンランド繋がりでムーミン展なので、「美術館=絵画・彫刻」で苦手意識のある方にも、行きやすいと思いますよ!

展覧会の概要

正式名は、 「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」展 です。

北欧の国フィンランドは1917年にロシアから独立したあと、新しい国を形作っていくのにモダニズムが推奨され、それがガラス工芸品のデザインにも色濃く影響を与えました。自然豊かなフィンランドの風土をデザインに落とし込む作家も多く、職人との協働で芸術性の高い「アートグラス」もさまざま誕生しています。

この展覧会では、そうしたモダンデザインの「アートグラス」を中心に、20世紀前半から現在までの作品を約140件見ることができます。

今後の開催日程と場所

巡回展は2022年11月からスタートし、すでに富山市ガラス美術館・茨城県陶芸美術館・東京都庭園美術館で開催され、今後は、山口・岐阜・兵庫と回ります。会期も来年5月までと長いので、お近くの場所で行ってみてください。

山口県立萩美術館・浦上記念館

  • 日程:2023年9月16日(土)~12月3日(日)
  • 開館時間:9:00~17:00 (入場は16:30まで)
  • 観覧料:一般 1,500 (1,300) 円/学生 1,300 (1,100) 円/70歳以上 1,200 (1,000) 円         ※( )内は前売りおよび20名以上の団体料金。※18歳以下無料

岐阜県現代陶芸美術館

  • 日程:2023年12月16日(土)~2024年3月3日(日)

兵庫陶芸美術館

  • 日程:2024年3月16日(土)~5月26日(日)

※岐阜と兵庫の詳細は未発表です。

東京都庭園美術館での展示

私が訪れたのは7月、 アール・デコの建築様式で知られる旧朝香宮邸の東京都庭園美術館 で開催された時でした。館内は、ほとんど「写真撮影・可」だったので、写真とともに、展示内容をご紹介したいと思います。

今回フューチャーされたデザイナーは8組。

  • アルヴァ&アイノ・アアルト(アアルト夫妻)
  • グンネル・ニューマン
  • カイ・フランク
  • タピオ・ヴィルッカラ
  • ティモ・サルパネヴァ
  • オイヴァ・トイッカ
  • マルック・サロ
  • ヨーナス・ラークソ

大まかな区分けとしては、 「パイオニアの2人」「黄金期の3人」「現代の3人」 という並びです。

アアルト夫妻(アルヴァ1898‐1976、アイノ1894-1949)

北欧インテリア・建築界の巨匠アアルト夫妻。 2021年に世田谷美術館が単独の展覧会を開いたくらい、今につながる偉大な功績を遺したカップルで、イームズに影響を与えたとも言われています。

代表作に、イッタラ社の花瓶があげられることも多いですが、花瓶だけでなく、お皿やタンブラーもデザインしています。今回の展示では、入ってすぐの場所に代表作の「アアルト・ヴェース(通称:サヴォイ)」が飾られていました。

1936年にアルヴァがデザインし、カルフラ=イッタラ社主催のデザインコンペで優勝したのち、翌年のパリ万博で発表され、国際的に高く評価された作品。なんと20種以上ものバリエーションがあるそうです。

隣の部屋には、製作中の「アアルト・ヴェース」が(左側)。このあと、上部を切り落として、口の波打った独特の形が出来上がるんですね。右にあるのは、製作に使う木型。つくるたびに木型が燃えるので、花瓶のうねり具合や表面感に微妙な違いが生まれるそうです。

今回の展覧会には、協賛で「イッタラ社」が入っているので、完成品だけでなく、こうした過程を見せてくれるのも面白いです。ちなみに、工場内の様子を撮影した映像も別フロアで流れていました。

この花瓶が「サヴォイ」と呼ばれるのは、アアルト夫妻が内装を手掛けたヘルシンキのレストラン「サヴォイ」に置かれたことがきっかけです。

こちらは「アアルト・フラワー」。色合わせが美しい4枚の組皿です。外側のラインがピタッと合うように4枚の曲線が計算されていて、ほんとうに見事でした。

グンネル・ニューマン(1909-1948)

彼女は若くして亡くなってしまったのが実に惜しいと感じました。作品を拝見するのは初めてでしたが、ミニマムな作りながら、優美で繊細な作風に虜になりました。

こちらは1946年の「カラー」。柔らかな曲線と凛とした直線の共存がなんとも美しいです。左の大きいほうが若干緑色が濃い感じですが、よく見ると、底の透明ガラス部分から上の乳白色にかけてグラデーションになっています。

後ろから見ると、グラデーションがよく分かります。ショーケースに入った状態だと裏側まで鑑賞することは出来ないので、こういう平場での展示はうれしいです。

カイ・フランク(1911-1989)

「フィンランド・デザインの良心」との異名のある、ガラスと陶器のデザイナー。 1945年にアラビア製陶所のディレクターに就任し、翌年、カルフラ=イッタラ社のデザインコンペで二等と三等を受賞した結果、ガラス製品の開発も手掛けるようになります。

カイ・フランクの色とりどりの作品たち。技法の開発にも取り組んでいたそうで、これまでにない色の取り合わせや造形を打ち出します。

こちらは超絶技巧。ベネチアのレースグラスの技法を取り入れて製作。イタリアの職人の協力を得て、フィンランドの工房のレベルをあげていきます。

タピオ・ヴィルッカラ(1915-1985)

ガラス、銀器、木、陶器など、多分野で活躍したマルチな才能の持ち主。カイ・フランクの多色使いのあとだからか、単色ガラスの奥行き感が新鮮に映りました。

ティモ・サルパネヴァ(1926-2006)

フィンランドのガラス工芸の黄金期は1950年代と言われますが、ティモ・サルパネヴァは、まさに1950年からイッタラ・ガラス製作所のデザインを担当し、1954年と1957年のミラノ・トリエンナーレで発表したアートグラスはグランプリの栄誉に輝きました。彼の作品は、2階の複数の部屋にわたって置かれていましたが、ちょうどお客さんが多いタイミングだったので写真は撮れていません。

気になる方は美術展ナビのサイトをご覧ください。

オイヴァ・トイッカ(1931-2019)

1963年からヌータヤルヴィ・ガラス製作所でガラス・デザイナーとしてのキャリアをスタート。フィンランド国立劇場で舞台美術や衣装を手掛けたこともあるそうです。遊び心あふれる作品がいろいろ展示されていました。

こちらの作品は、正面から見る表情と、横や斜めから見る表情が全然違うので、ぜひ、いろんな角度から眺めてみてください。

マルック・サロ(1954-)

元々テレビや家電製品のデザイナーとして働いていたところ、オイヴァ・トイッカにスカウトされ、1983年にヌータヤルヴィ社に入社。プロダクト・デザインでも、冒険的なデザインを発表しました。

2017年に発表した「アートグラス、ユニークピース」。ユニークピースとは通常は「一点もの」という意味ですが、このワイヤーとガラスを融合させた作品はまさにユニークです。金属製のメッシュのなかに、直接ガラスを吹き込んで作っているそうです。

ヨーナス・ラークソ(1980-)

今回の展示のなかで、一番の若手です。庭園美術館の学芸員による解説を見ると、ベネチアンガラスに影響を受けていると書かれています。

言われてみると、たしかに、この作品なんかはベネチアンビーズにそっくりです。不透明のガラスのベースにガラス棒でらせん模様を描く感じは、吉祥寺の専門店「ベネチアン・バザー」で売ってるビーズの技法と同じ。私自身が、ベネチアンビーズでアクセサリーを作っているので、親近感を覚えました。

美術館ごとに違う展示方法を楽しんで

東京都庭園美術館での展示は、スペースの関係からか、ムーミン展は行っていませんでした。けれど、1930年代のアアルト夫妻やグンネル・ニューマンの作品を同じ時代のアール・デコの空間で見るという贅沢なコラボレーションが生まれていました。

鳥をモチーフにしたオイヴァ・トイッカの「バード・バイ・トイッカ」が、展示の順路を示すという新しい試みも面白かったです。案内文が日本語とフィンランド語だったのも粋でしたね。

きっと、各美術館ごとに趣向を凝らした展示になっていると思いますので、ぜひ、そういったところにも目を向けて頂けたらうれしいです。

参考・出典

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