お西さんとお東さん 京都ど真ん中の2つの本山をゆく<西本願寺・東本願寺>
日本で最大の仏教宗派ともいわれる、浄土真宗。この真宗には10派ありますが、そのうち2派が門徒のほとんどを占めています。
ひとつは真宗本願寺派、もうひとつは真宗大谷派です。本願寺派は西本願寺、大谷派は東本願寺として、ふたつとも本山は京都にあり、しかもどちらも京都駅のすぐ北側です。
親鸞という巨大な思想家 西本願寺
分裂した浄土真宗
浄土真宗を作った鎌倉時代の僧侶、 親鸞(しんらん) は、「お寺もいらない、仏像もいらない、ただ阿弥陀如来に念仏を唱えるだけでいい」という考え方でした。その親鸞のお墓を現在の大谷廟に祀ったところから、のちの蓮如によって山科本願寺が作られ、顕如(けんにょ)の石山本願寺へとつながって行きます。
織田信長との戦いのなかで顕如の長男・教如との 意見が食い違う ところから分裂がはじまります。顕如は次男に家督を譲り西本願寺に、徳川家康は教如を支援し東本願寺としたため、分かれていきましたが、根本的な 親鸞の教えや信仰心 に変わりはありません。
堀川通りから境内へ 阿弥陀堂と御影堂
京都駅からやや西へ、堀川通りから西本願寺へ入ります。正面には巨大な木造建築物が並んでいます。阿弥陀堂は江戸時代の1760年に再建されました。国宝で、本尊の阿弥陀如来像はもちろん、欄間の牡丹の彫刻にも注目です。阿弥陀堂よりさらに大きいのが御影堂です。ここは宗祖 親鸞聖人(しんらんしょうにん)の御影が安置されています。1636年、江戸時代初期の再建です。
国宝で、1000畳近い広さがあり、1200人は入れるといいます。普通のお寺の感覚でいうと御影堂が本堂かと思いますが、あくまで阿弥陀様が本尊の 阿弥陀堂が本堂 という位置づけです。御影堂のほうが大きいのは報恩講などの行事を行うためです。基本的に浄土真宗は民衆に開かれたお寺ということで、本山でさえ拝観料を取ることはありません。
世界遺産で国宝ばかりの境内
国宝の飛雲閣は、金閣、銀閣とともに京都三名閣といわれるうちのひとつです。通常非公開ですが、外観だけでもこけら葺きの屋根で見たことのない形と美しさがわかります。有名な白黒書院も、唐門も、能舞台も、とにかく国宝だらけで、なかなか公開されないのが残念でなりません。
「他力本願」の教えが響く
浄土真宗といえば「他力本願」の教えです。人間というのは 仏に比べれば無力 でどうしようもない存在である、自力で成仏できるようなものではなく、仏にすべてを任せればいい、といったニュアンスです。どんな物事も必ずなるようになる、という思想は、これからの本当の危機の時代にこそ生きてくるでしょう。
龍谷山本願寺
- 京都市下京区堀川通花屋町下る本願寺門前町
- TEL 075-371-5181
- 開門5:30 閉門17:30
- 境内無料
- 駐車場:なし
自然な信仰心としての東本願寺
圧倒的な建物 御影堂
京都駅のすぐ北にある東本願寺なので、京都タワーは「 お東さんのろうそく 」とも言われています。境内の配置は西本願寺によく似て、巨大な門を通るとやはり阿弥陀堂と御影堂が並びます。 御影堂は世界最大級の木造建築 と言われます。木造建築の世界最大は東大寺の大仏殿だったはずですが、建物の大きさはこのくらいのレベルになると間口の広さや床面積の大きさ、屋根までの高さなど基準によって判断が変わってきます。とにかく巨大です。
「善人なおもて往生をとぐ いわんや悪人をや」の真意とは
親鸞の言葉とされる「善人なおもて往生をとぐ いわんや悪人をや」とは、善人でさえ極楽浄土へ行ける、それなら悪人はなおさら行けるに決まってる、という意味です。おかしいですね、なんで悪人が行けるんだということです。
これは、どうしても悪いことをしてしまう人間ほど 仏にすがるしかない 、善人は自分が善人だという自覚を持ち自分こそ正しいと考えがちで、むしろ 悪人のほうが他力本願になりやすい 、ならば悪人こそ救われやすい、といった 逆説的な言い方 をしています。多少でも親鸞と浄土真宗の思想を理解すれば、仏像や建物の見え方が変わってきます。
800年前の「ジェンダー平等」
渡り廊下には、黒く太いロープが展示されています。じつは、明治時代の 女性たちの髪の毛 だと言います。巨大な木材を運ぶのに強いロープが必要になり、女性たちの信者が寄付したものです。気の遠くなるような髪の毛の量です。女性たちの信者が多く、しかも信仰心が厚かったからこそできたことです。
当時は今とは比較にならないほど女性の人権は無視されていました。なぜ 女性たちが浄土真宗に集まった かというと、親鸞も親鸞の師匠の法然も、「仏の前で人間が平等なら、女性もその例外ではない」というスタンスを続けたからでした。
真宗本廟 東本願寺
- 京都市下京区烏丸通七条上る
- TEL:075-371-9181
- 開門・閉門時間 3月~10月 5:50~17:30 11月~2月 6:20~16:30
- 境内自由
- 駐車場なし
「モノ」より「ココロ」の本願寺
東西を問わず本願寺に共通するのは、建物や土地などの「モノ」ではなく、形はないけど「信じるココロ」といったことでした。親鸞得意の逆説的な言い方を借りれば、「モノ」に執着しないからこそ御影堂のような巨大な「モノ」が形になったのかもしれません。形として残らない
ココロを大切にしたからこそ膨大な国宝が残った
のでしょうか。
いずれにしても、浄土真宗を知ることで
本願寺観光は10倍ココロに染みる
ことになります。
出典・参考
やってみよっか?